写真の構図とは?
写真の構図法とは、「どこに何を配置するか」を決める手法のことです。それによって作品のテーマが明確になったり、主役がより魅力的になったりします。同じものを撮影しても、構図によって伝わるものが変わってくるので、ぜひマスターしましょう。
とはいえ、そんなに難しい話ではありません。いくつかの単純なパターンに当てはめることで、初心者でも簡単に習得できます。
本記事では、初心者でも使いやすい 10 パターンについて説明しています。そのうち最も基本的な「三分割構図」については、さまざまなシーンで応用できる重要なテクニックでもあるため、特に詳しく解説しています。また撮影後に Google フォト アプリで構図を整える方法もご紹介していますので、構図の基本について一通りのことが学べるでしょう。
まずは基本的な「三分割構図」をマスター
最初に覚えたいのは「三分割構図」です。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、さまざまなシーンで使えるオールマイティな構図と言われています。簡単にマスターできて効果は絶大ですので、ぜひお試しください。
美しいバランスになる「三分割構図」とは
三分割構図とは、画面の縦と横を三分割した「3 × 3」の構図のこと。その際に、左下の図のように「ライン」を活用する場合もあれば、右下の図のようにラインとラインの「交点」を活用する場合もあります。
ラインや交点は、それぞれ 4 つありますが、すべてを使う必要はありません。よく使われる方法は、主役となる被写体を、どれか 1 つのライン、あるいは 1 つの交点に合わせることです。主役を中央ではなく端に寄せることで、反対側に大きな余白ができ、バランスの良い構図を創り出しています。
三分割構図の「ライン」を活用する方法
下の写真は、樹木に伸びるツタが不思議なほど印象的な写真です。なぜ印象的に見えるかというと、その理由は三分割構図にあります。ツタのブラウンの蔓とグリーンの葉が、三分割構図の右の縦ラインに合わせてあり、美しいバランスになっているのです。たったそれだけのことですが、調和の取れた空間を生み出し、見る人の心を和ませてくれます。
他にも「塔」や「街灯」など細長い被写体は、三分割構図のラインに合わせるだけで、おしゃれな雰囲気になるので、ぜひお試しください。
ラインを「面」として活用する方法
ラインの使い方は、ライン上に主役を合わせるという方法だけではありません。ラインを境界線にして、面と面のコントラストを際立たせることもできます。
たとえば下の写真は、空と海のブルー、草原のグリーン、この 2 つのエリアのコントラストが美しい風景です。もちろん夕日に照らされた黄金の雲や海が主役ですので、ブルーのエリアの方を大きくするために、ブルーとグリーンの境界線は下の横ラインに合わせました。そうすることで、空と海の壮大さが自然と伝わってきます。
この方法はかなり応用が利きます。空と自然、空と街並、建物と背景など、面と面の境界線があるシーンは多いので、そんなときは三分割構図の 4 つのラインのどこかに境界線を合わせてください。全体のバランスを保ちながらも、メリハリの効いた構図になるので、魅力的な写真になります。
三分割構図の「交点」を活用する方法
次に、三分割構図の「交点」に主役を置く例をみていきましょう。下の写真は、夕日に照らされて輝く小さな草が主役です。その草を左下に寄せることで、砂丘にポツンと生える様子が強調され、反対側に大きな余白ができるため、砂丘の広がりや太陽の豊かさも表現できます。
また、被写体は上にあるより下にある方が力強さや安定感が増します。主役の草を下に置くことで、小さいながらも強い生命力を放つ様子も、同時に表現することができるのです。
4 つの交点のうち、どこに主役を置くべきか悩んだときは、下の交点には強さや安定感が、上の交点には動きや緊張感が表現されやすい、ということも参考にしてみましょう。
主役のなかの主役に「交点」を合わせる方法
さらに三分割構図を生かすには、主役のなかの主役を意識するとよいでしょう。たとえば下の写真の主役はネコですが、そのネコのなかの主役を瞳にしたい場合、瞳を三分割構図の交点に合わせることで、自然と瞳の存在感が強まります。
また、左を見ているネコを右に寄せることで、視線の先に余白を作ることができます。それによって視線の先の広がりを感じさせるだけでなく、ネコが何を見ているのか、見る者の想像をかきたてることでしょう。
なお、この写真はネコの存在感を強めるために、撮影後に背景のレンガに「ぼかし」の加工を入れています。スマホのカメラではぼかしを十分に入れられない場合もあるので、Google フォトなど簡単に加工できるアプリを活用しましょう。加工法は後述しますので、参考になさってください。
中心点に「交点」を合わせる方法
下の写真は、画面いっぱいにライトグリーンの葉が広がり、強いインパクトを与えています。このように大きくズームアップする場合にも、三分割構図の交点を活用しましょう。たとえば、この写真では丸まった葉の中心点に交点を合わせていますが、そうすることで自然とバランスの取れた写真になっています。
複数の「ライン」や「交点」を組み合わせる方法
三分割構図では、複数のラインや交点を組み合わせることで、より魅力的な写真になります。たとえばラインの活用法で説明した下の写真は、ブルーとグリーンの境界線をラインに合わせただけではなく、実は太陽を左上の交点に合わせています。複数のラインや交点を意識すると、まるでプロのような作品に仕上げることができるでしょう。
三分割構図が簡単にできるスマホの「グリッド機能」
三分割構図のメリットはわかったけれど、実際に撮影するのは難しいのでは? と思う方も多いかもしれません。でも、大丈夫です。ほとんどの Android スマホのカメラには、三分割構図が簡単にできるグリッド機能がついています。
グリッド機能をオンにすると、下の写真のように撮影画面にグリッドが表示されるようになります。ただグリッドに合わせるだけで、簡単におしゃれな仕上がりになりますので、ぜひお試しください。
下記は Google Pixel 6 での設定方法ですが、他の Android スマホでもカメラの設定やメニューなどからグリッド機能をオンにできる場合が多いでしょう。
【グリッドの使い方】
- カメラアプリを起動
- 左上の設定アイコン(歯車マーク)をタップ
- [その他の設定] をタップ
- [グリッドの種類] をタップ
- 三分割構図を意味する [3 × 3] をタップ
他にもある簡単にできるおしゃれな構図
「三分割法」の他にも、さまざまな構図があります。ここでは簡単に習得できる構図と、その構図を取り入れることで生まれる効果について説明します。
コントラストを魅せる「二分割構図」
「二分割構図」とは、画面を上下あるいは左右に半分ずつ分ける構図です。かなり安定感があり、コントラストの効いた構図ですので、空と海、空と山、空と街並など、雄大な風景を撮影するときには、特に向いています。
下の写真では、水平線を二分割構図の横ラインに合わせています。上半分の空にはダイナミックな雲と太陽、下半分の海には穏やかな波が映し出され、そのコントラストがとても印象的です。
鏡のようにユニークな「シンメトリー構図」
二分割構図の応用ですが、単に上下あるいは左右で分けるだけでなく、それが鏡に写したような関係にあることを「シンメトリー構図」といいます。思わず目をひくような写真になることが多いので、ぜひチャレンジしたいものですね。
下の写真は、静かな湖面が水鏡となり、森と山を美しく映し出しています。シンメトリーの効果を強めるためにも、二分割構図のラインに境界線をきちんと合わせましょう。
ダイナミックな動きが出る「対角線構図」
安定感のある三分割構図や二分割構図と異なり、動きを与えるのが「対角線構図」です。対角線とは、左上の隅から右下の隅へ、あるいは右上の隅から左下の隅へ、ナナメに横断するラインです。
下の写真は、水平で安定感のある山や海の背景に、砂丘がナナメに走っています。砂丘に残る轍(わだち)と相まって、写真にダイナミックな動きがもたらされているのではないでしょうか。
対角線構図は雄大な風景だけでなく、小さな世界でも有効です。たとえば下の写真は、グリーンの大きな葉の上に、赤みがかったグレーの小さな葉と茎がナナメに伸びています。なにげない庭先の一風景ですが、ナナメのラインが動きや面白みを与え、不思議と心に残ります。
対角線構図を活用する場合、カメラをナナメに傾けて撮影する方法もあります。たとえば下の写真は、普通に撮影するとあまり面白みが感じられなかったので、カメラをナナメにして対角線を作り出しました。ピンクの花とグリーンの背景のコントラストが、よりダイナミックなものへと変わります。
主役の存在感が強い「日の丸構図」
「日の丸構図」とは、写真の中央に主役を配置するものです。主役の存在感が強い構図ですが、多くの人が主役を真ん中にして撮影するので、ほとんどが日の丸構図になりやすく、平凡な印象になりがちです。
そこで日の丸構図にする場合は、背景をシンプルにしたり、ぼかしたりすることで、主役を際立たせましょう。下の写真も、主役の鮮やかな赤いダリアが印象的ですが、背景の色の数が少なく、ぼかしも効いています。
また、日の丸構図という名前ですが、丸いものを中央に配置するという意味ではありません。下の写真のように、主役が丸くなくても真ん中に置くことを日の丸構図といい、インパクトのある構図になります。
特に下の写真は、主役の岩に趣があり存在感も強いので、三分割構図などで端に寄せず、堂々とした日の丸構図にした方がよいでしょう。
安定感や重厚感を表現できる「三角構図」
「三角構図」とは、三角形を意識して撮る構図のことで、必ずしも三角形になる必要はありません。下の図のように台形に近いこともあるでしょう。いずれにしろ底辺の方が長いので安定感が生まれます。また頂点に向かって下から上へ視線を誘導するため、高さや奥行きを感じさせることもできます。
他にも「上り坂」や「階段」などは、三角形を意識して撮影するだけで、画面に安定感が生まれ、また高さや奥行きが表現できるので、ぜひお試しください。
緊張感や躍動感を表現できる「逆三角構図」
「逆三角構図」とは、三角構図と反対に上辺の方が長いので、不安定な構図となり、緊張感や動きが生まれます。たとえば下の写真は、背景のぼけたグリーンやホワイトのラインも含めて逆三角構図になっていますが、視線が上から下へ誘導されるので、今にも水の雫(しずく)がこぼれ落ちそうな様子がより強調されています。
他にも「渓谷」や「滝」などは、逆三角形を意識して撮影するだけで、画面に緊張感が生まれ、ダイナミックな動きが表現できるので、ぜひお試しください。
奥行きや臨場感を表現できる「放射線構図」
「放射線構図」とは、複数の線が一つの点(収束点)から放射状に伸びた立体的な構図で、奥行きや臨場感を表現できます。たとえば下の写真は、道が手前からずっと先まで続いているような奥行きが感じられ、まるでその場にいるような気持ちになりやすいでしょう。
また、収束点を画面上のどこに置くかは大切なポイントです。初心者のうちは、画面の中心か、あるいは上の写真のように三分割構図の交点に置くようにすれば、あまり悩まなくてすむのではないでしょうか。スマホカメラのグリッドに合わせるだけで、簡単に美しいバランスが取れます。
奥行きやコントラストを表現できる「遠近構図」
「遠近構図」とは、近くのものと遠くのものに距離があり、またそれぞれのエリアがはっきりと分かれるため、奥行きやコントラストを表現しやすい構図です。
下の写真では、近くの木と遠くの川の遠近差で、川が奥底にあるように感じられます。また、木には動きがなく、川には動きがあるので、そのコントラストによって、川の動きにより躍動感がもたらされています。
さらに、近くの木は川を囲むようにレイアウトされているので、額縁にいれたようなおしゃれな雰囲気も醸し出されています。
非日常を演出できる「ローポジション & ローアングル」
「ローポジション」と「ローアングル」は、どちらも構図ではなく、カメラの位置や向きのことですが、簡単な方法で効果が大きいのでご紹介します。ローポジションとは低い位置のことで、ローアングルはカメラを下から上に向けること。つまりカメラを低い位置に置き、上向きに撮影することで、普段、目にすることのできない迫力のある世界を撮影することができます。
下の写真は、まるで虫のような視線で、花の裏側を見ることができています。目をひきやすい面白みが出るだけでなく、大空に向かって伸びる花の生命力も伝わってきますね。
さらにローポジションの裏ワザとして、スマホを逆さまにして地面に置いて撮影すると、より低い位置から撮影でき、より高い効果が生まれます。ぜひお試しください。
撮影後に構図を変更するのも簡単!
スマホカメラの良い点は、気軽に撮影できるだけでなく、手軽に編集加工できることです。ここでは撮影後に Google フォト アプリを使って構図を変更する方法を説明します。
三分割構図を日の丸構図へ変更
下の写真は、タンポポを三分割構図で撮影したものです。バランスのよい写真ではありますが、もう少しインパクトを出すために日の丸構図に変えてみましょう。
構図を変えるときに便利なのが、Google フォトの「切り抜き機能」です。下の写真のように大きくアップにし、日の丸構図に変えてみました。背景がシンプルだったことも功を奏し、かなり良い雰囲気に仕上がったのではないでしょうか。
【日の丸構図への変更方法】
- Google フォト アプリを起動
- 加工したい写真を選択
- [編集] タブをタップ
- メニューから [切り抜き] をタップ
- アスペクト比アイコンをタップ(左下の図)
- [元のアスペクト比] をタップ
- 写真を長押しすると三分割グリッドが表示されるので、それを参考にしながら、四隅のピンクの丸をドラッグしてサイズを調整したり、写真をドラッグして位置を調整したりします(右下の図)
- [保存] をタップ
- 上書き保存したい場合は [保存] をタップ、別のファイルとして保存したい場合は [コピーとして保存] をタップ([保存] を選んでも、また編集前の写真に戻すことはできます)
傾いた構図を三分割構図に変更
撮影したときは気づかなかったけれど、後で見返すと下の写真のように傾いていることがありませんか? バランスが悪い写真になっているため、見る人の心がなんとなく落ち着かなくなってしまうので、できれば水平に修正しましょう。
そこで Google フォトの「回転機能」を使って、下の写真のように傾きを修正しました。さらに「切り抜き機能」を使って、三分割構図にも変更することで、より魅力的な写真になったのではないでしょうか。
【三分割構図への変更方法】
- Google フォト アプリを起動
- 加工したい写真を選択
- [編集] タブをタップ
- メニューから [切り抜き] をタップ
- 回転ができる画面が表示されます(左下の図の赤枠内にあるのは回転アイコンですが、このアイコンをタップするたびに反時計回りに 90° ずつ回転していくため、ここではタップしないでください)
- 右下の図の赤枠内のメモリが回転の角度を示していますので、この数字をスライドさせながら水平になるよう調整します
- このまま保存したい場合は手順 8~9、さらに三分割構図へ変更したい場合は手順 10~14 へ進みます
- [保存] をタップ
- 上書き保存したい場合は [保存] をタップ、別のファイルとして保存したい場合は [コピーとして保存] をタップ([保存] を選んでも、また編集前の写真に戻すことはできます)
- アスペクト比アイコンをタップ(左下の図)
- [元のアスペクト比] をタップ(アスペクト比とは縦横比のことですが、デフォルトがフリーのため、[元のアスペクト比] を選択しないと縦横比が変わってしまいます)
- 写真を長押しすると三分割グリッドが表示されるので、それを参考にしながら、四隅のピンクの丸をドラッグしてサイズを調整したり、写真をドラッグして位置を調整したりします(右下の図)
- [保存] をタップ
- 上書き保存したい場合は [保存] をタップ、別のファイルとして保存したい場合は [コピーとして保存] をタップ([保存] を選んでも、また編集前の写真に戻すことはできます)
背景をぼかして構図を強調
前述したとおり三分割構図でご紹介したネコの写真は、ネコの存在感を強めるために、撮影後に背景のレンガに「ぼかし」の加工を入れています。
- 左下の写真は、加工前の写真
- 右下の写真は、加工後の写真
ぼかし加工を Google フォトで行う方法は下記ですが、Google One のメンバーまたは Google Pixel のユーザーである必要があります。
【背景をほかす方法】
- Google フォト アプリを起動
- 加工したい写真を選択
- [編集] タブをタップ
- メニューをスライドさせて [ツール] をタップ
- [ぼかし] をタップ
- フォーカスしたい場所をタップして丸い白枠を表示(左下の図)
- 数字をスライドさせながらぼかしの度合いを調整(右下の図)
- 必要であれば奥行きの度合いも調整
- [完了] をタップ
- [コピーを保存] をタップ
感動的な写真をシェアして世界を広げよう
カメラの基本的な構図について、フォトグラファーの監修のもと解説しましたが、いかがでしたか。三分割構図はあらゆるシーンで活用できる構図で、しかも Android スマホのグリッド機能を利用すれば簡単に撮影できるので、ぜひチャレンジしてみてください。
また、二分割構図、シンメトリー構図、対角線構図、日の丸構図、三角構図、逆三角構図、放射線構図、遠近構図など、さまざまな構図もご紹介しました。それぞれに特徴がありますので、シーンに合わせて使い分けましょう。
スマホカメラで撮影する大きなメリットは、撮影後にそのまま加工しやすいことです。Google フォトなどのアプリを活用することで、より魅力的な作品に仕上げることも可能です。
さらにスマホなら、家族や友人などと共有することも、SNS などで発信することも、とても簡単ですね。スマホ一つで感動的な写真を創り出し、大切な人たちとシェアすることで、世界を広げていきましょう。
※本記事で紹介した内容は、Android のバージョンや機種によって異なる場合があります。
※一部の編集機能は、Google One メンバーまたは Google Pixel をお使いのユーザーにご利用いただけます(お使いのデバイスに 3 GB 以上の RAM と Android 8.0 以降が搭載されている必要があります)。
※本記事で紹介した内容は、執筆時(2022 年 8 月)のものです。
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