USB Type-C とは?
USB Type-C®(USB-C®)は、現在多くの Android スマホに採用されている USB の一つです。
USB とは「Universal Serial Bus(ユニバーサル シリアル バス)」の略称で、スマホやパソコンなどと周辺機器を接続するための標準規格です。USB には USB Type-A、USB Type-B、Micro USB Type-B などの種類があり、それぞれコネクタ(接続部分の形状)が異なります。
中でも USB Type-C は、差し込む向きを気にせず使えたり、急速充電に対応しているなどの特長があり、スマホ以外にも、パソコン、タブレット、デジタルカメラなどの幅広いデバイスで普及が進んでいます。
ここからは、USB Type-C の特長やメリットを詳しく紹介します。
差し込む向きを気にせず使えるコネクタ
USB Type-C のコネクタは、上下左右の区別がない表裏対称のデザインとなっています。
たとえば、USB Type-A や Micro USB Type-B などは上下の形が異なるため、ケーブルを差し込む際にはコネクタの上下の向きをポート側に合わせる必要があります。コネクタが表裏対称の USB Type-C は、差し込む向きを気にする必要がないため、より使いやすいです。
スマホ側と接続デバイス側のどちらにも対応
充電やデータ転送のために、スマホと他のデバイスを接続する際、これまではスマホ側と接続デバイス側でコネクタの形状が異なる場合が多く、使用する USB ケーブルは両端のコネクタが異なることが一般的でした。
しかし、近年は USB Type-C 対応のスマホやデバイス、充電器が増えてきており、両端が USB Type-C のケーブルを使うことができるため、どちら側かを気にすることなくそれぞれの機器に差し込むことができて便利です。
高速のデータ転送規格にも対応
USB はコネクタだけでなく、バージョンによる違いもあります。バージョンは USB 1.0 から始まり、現在では USB4® が登場していますが、バージョンアップごとにデータ転送速度は高速化されています。
USB Type-C は、USB 2.0 から最新の USB4 Version 2.0 までに対応しているため、バージョン次第では高速なデータ転送も可能です。
なお、USB は何度も名称が変更されたため同一規格でも複数の名称があります。最新の名称は「USB 5 Gbps」などデータ転送速度を示したわかりやすいものですが、市場で多く見られるのは「USB 3.2 Gen 1」など「Gen」のついた名称です。「Gen」とは Generation(世代)の略で、後ろに続く数字が大きいほどデータ転送速度は高速です。
USB Type-C が対応する主な規格の名称と最大転送速度をまとめると以下となります。
USB Type-C が対応する主な規格の名称 | 最大転送速度 |
USB 2.0 | 480 Mbps |
USB 5 Gbps USB 3.2 Gen 1 USB 3.1 Gen 1 USB 3.0 |
5 Gbps |
USB 10 Gbps USB 3.2 Gen 2 USB 3.1 Gen 2 USB 3.1 |
10 Gbps |
USB 20 Gbps USB 3.2 Gen 2×2 |
20 Gbps |
USB 40 Gbps USB4 Version 1.0 |
40 Gbps |
USB 80 Gbps USB4 Version 2.0 |
80 Gbps |
USB Type-C が最初に対応した USB 2.0 の転送速度は最大 480 Mbps で、1 GB(ギガバイト)のデータを転送するのに約 16 秒かかっていました。現在のスマホで多く採用されている USB 3.2 Gen 2 は、転送速度が最大 10 Gbps で、1 GB のデータを約 0.8 秒で転送できます※。スマホカメラで撮影した高画質な 4K 動画などでも、外部ストレージへ快適に転送できます。
お使いのスマホなどのデバイスがどの転送規格に対応しているかは、メーカーサイトのスペック表などで確認してみてください。
※データの転送速度は理論値です。
※最大の転送速度での利用には、デバイスと接続する周辺機器、ケーブルがそれぞれ利用したいデータ転送規格に対応している必要があります。また最大転送速度の数値は、常にこの速度であることを保証するものではありません。
急速充電ができる USB PD にも対応
USB Type-C は、「USB PD(Power Delivery)」という給電規格に対応しています。従来の USB 充電よりも一度に大きな電力を供給できるため、急速充電が可能です。
たとえば、多くの Android スマホが対応している「USB 3.2 Gen 1(USB 5 Gbps)」や「USB 3.2 Gen 2(USB 10 Gbps)」は最大 4.5 W の給電能力しかありませんが、「USB PD」に対応することで最大 240 W までの給電が可能になりました。出勤前に充電が少ないことに気付いたり、外出先で充電が減ってしまっても、短時間で充電することができます。
また、USB PD によって給電能力が高まったため、タブレットやノートパソコンなど消費電力の大きなデバイスにも USB Type-C で充電できるようになりました。将来的にはさらに給電能力が高まり、より消費電力の大きなゲーミングパソコンなども充電できるようになるとされています。
複数のデバイスで充電器などを共有可能
USB Type-C は、スマホだけでなく、パソコンやタブレット、ワイヤレス イヤホン、デジタルカメラなど、対応機器が増えてきています。USB Type-C 対応のデバイスや周辺機器をそろえれば、充電器やケーブルを一つにまとめることができます。
なお、複数のデバイスを同時に充電したい場合は、各デバイスの合計 W 数が充電器の最大出力以内である必要があります。
映像出力の拡張仕様にも対応
USB Type-C は、USB 規格以外の信号を流すことも可能で、映像を出力できる「DP Alt Mode(DisplayPort Alt Mode)」にも対応しています。DP Alt Mode 対応のスマホであれば、HDMI ケーブルを使ってモニターやテレビにスマホの画面を映すことができます。
たとえば、Google Pixel 8 以降の Google Pixel シリーズは DP Alt Mode に対応しているため、Google Pixel 8 で撮った思い出の写真や動画を大画面で楽しめます。詳細はヘルプセンターの Google Pixel の画面を共有するをご覧ください。
また、ケーブルは、スマホ側のコネクタが USB Type-C、モニター側のコネクタが HDMI のものを使います。使いたいケーブルのコネクタが USB Type-C ではない場合には、変換アダプターを使用しましょう。
なお、DP Alt Mode に非対応のスマホでも、HDMI ポートがモニターやテレビ側にあれば、「Chromecast」や「Chromecast with Google TV」を使って、USB Type-C の代わりに Wi-Fi 経由でスマホの画面を大画面に映すことができます。
※メーカーによって、DisplayPort、DisplayPort Alternate Mode、オルタネートモードなど表記が異なる場合があります。
互換性が高く性能差があっても接続可能
USB Type-C は互換性が高いため、最大転送速度が異なるデバイス同士をつないでも問題なくデータ転送を行えます。同様に、最大 W 数が異なるデバイス間でも充電が可能です。
ただし、転送速度や給電速度は性能が低い方に対応します。たとえば、「Google Pixel 8 Pro(USB 3.2 Gen2)」は 10 Gbps の転送速度に対応していますが、接続する外部ストレージの最大転送速度が 480 Mbps だった場合、実際のデータ転送速度は最大でも 480 Mbps までとなります。
デバイスの性能差によってデータの転送速度や充電時間などのパフォーマンスは異なりますが、充電やデータ転送自体は問題なく行える点も USB Type-C の魅力です。
USB Type-C ケーブルを選ぶ際のポイント
USB Type-C ケーブルにはさまざまな種類があるので、購入する際に迷う方もいるでしょう。ここでは、USB Type-C ケーブルを選ぶ際に注目したいポイントについて紹介します。
接続したいデバイスに対応したコネクタか
USB Type-C ケーブルには、両端のコネクタが USB Type-C の場合と、片方のコネクタが USB Type-A などと異なる場合があります。接続するデバイスや充電器などのポートの形状を確認してケーブルを選びましょう。
また、USB Type-A を USB Type-C に変換するアダプターなども販売されています。お持ちのケーブルと接続する周辺機器やデバイスのポートが異なる場合は、変換アダプターを活用してみましょう。
利用目的に対応している規格か
USB Type-C ケーブルの利用目的によって、選ぶ際に重視するポイントが異なります。充電速度やデータの転送速度、映像出力が可能かなど、ご自身の利用目的に合った性能があるか確認しましょう。
【充電速度を重視する場合】
充電速度を重視したい場合は、USB PD 規格に対応していて、給電可能な電力数(W 数)が高いケーブルを選ぶとよいでしょう。USB PD 対応のケーブルには、最大 W 数が 60 W、100 W、240 W など、いくつかの種類があります。お使いのスマホや充電器が対応している W 数を確認し、必要な W 数に対応したケーブルや充電器を選びましょう。
また、パソコンの充電ケーブルとしても利用可能な場合もあります。スマホとパソコンで同じケーブルや充電器を使いたい場合は、お使いのパソコンに必要な W 数も確認しておきましょう。
【転送速度を重視する場合】
データの転送速度を重視する場合は、本記事の「高速のデータ転送規格にも対応」にある表を参考に、ケーブルが対応している最大転送速度を確認しましょう。
また、データ転送速度と充電速度は直接関係がないため、たとえ充電速度が速い規格のものであっても、データ転送が不可能または高速規格ではない場合もあります。転送速度を優先したい場合は、高速規格に対応しているかに着目して選びましょう。
【モニターに映像出力したい場合】
モニターなどに映像出力したい場合は、製品ページなどで映像出力に対応しているか確認しましょう。
また、映像出力できる USB Type-C ケーブルの中でも、4K 出力や 8K 出力に対応したものなどもあるため、利用するデバイスやモニターに合わせて必要なスペックを選ぶとよいでしょう。
なお、充電速度、データ転送速度、映像出力、すべての項目の水準が高いケーブルも存在します。必要に応じて選びましょう。
USB Type-C 対応のデバイスやケーブルをそろえて、スマホでできることを広げよう
USB 規格の一種である USB Type-C(USB-C)は、Android スマホをはじめ多くのデバイスに採用されています。コネクタが上下左右の区別がないデザインで、差し込みやすいのが特長です。
さらに、USB Type-C は、高速なデータ転送や USB PD での大電力給電、DP Alt Mode による映像出力など、これまでの USB より高い性能を持っています。それぞれの規格に対応するデバイスをそろえれば、目的によって多彩な使い方ができるでしょう。
普段使用するデバイスやケーブルを USB Type-C 対応の機種にそろえて、スマホでできることをさらに広げてみてはいかがでしょうか。
※USB Type-C®、USB-C®、USB4® は USB インプリメンターズ フォーラムの商標です。
※本記事で紹介した内容は、Android のバージョンや機種によって異なる場合があります。
※本記事で紹介した内容は、執筆時(2024 年 9 月)のものです。